オーディオのライトサイド

オーディオにイコライザーは不可欠な存在

イコライザ―の役割は大きく2とおりです。1つは積極的に音色を変化させることで、もう1つは音声のキャリブレーションです。イコライザ―を”好みの音にするためのもの”とだけ解釈してしまうと、”そんなのいらない”派にとってイコライザ―は無縁のものになってしまいます。

イコライザーは音楽を作る人にとっても聴く人にとっても無くてはならない存在ですから積極的に使いましょう。イコライザーの本来の役割に気づけばその重要性を理解できるようになります。

目次

音楽再生に欠かすことのできないイコライザー

イコライザーとは

equal=等しい

equalize=等しくする

equalizer=等しくする装置

レコード再ブームでイコライザーが再注目

ホームオーディオからほぼ消え去った感のあったイコライザーも、レコードの再人気によるフォノイコライザーの需要でいくらかは復活したと言えなくもありません。

とは言え、フォノイコライザーはレコード再生という限られた使用目的に特化したイコライザーですから、レコードを聴かない人にとっては無用の長物です。

イコライザーの役割

イコライザーは冒頭にあげたように”等しくする装置”として誕生したものです。

では何を等しくするのか?

メディアに記録された音楽など、何らかのプロセスを経て再現される音を本来の音と等しくする(あるいは限りなく近づける)

ということになります。
※ フォノイコライザーも本来の音を再現するためにレコードに刻まれた音を補正する装置です

部屋などの閉じた空間での音楽再生は、高音質再生のためにやっておくべきたった一つの事:音響特性の改善で書いたように必ず歪みますからイコライザーを使って補正する(=元の状態に戻す)必要があります。(補正しなければ、どれだけオーディオ機器をグレードアップしても本来の音とはかけ離れた音で再生されます)

このように本来であれば音楽再生に無くてはならない存在のイコライザーですが、現状はどうでしょうか?

分野別のイコライザー利用状況

ホームオーディオ製品としてイコライザーは絶滅危惧種的存在で、100万円前後の高額な製品が幾つか存在しているだけと言えるような状況です。※T社(仏)、D社(豪)、A社(日)など

ホームオーディオの中でもモバイル用途がメインのDAPの中にはイコライザーを搭載した機種もあります。FiiO、Astell&Kern、Lotooなど本格的なパラメトリックイコライザーを搭載した機種が存在します。

一方でプロオーディオ製品はどうでしょうか?

以前と比べるとプロオーディオ機器でもハードウェアの単体のイコライザーは減っているように見受けられます。しかしこれは需要がなくなったわけではなく、多くがPCのソフトウェアとして使われるようになったためと考えられます。

それでもハードウェアならではの、あるいはアナログならではの良さも重宝されていて、elysia社(独)のmusiqやMANLEY社(米)のMASSIVE PASSIVE STEREO TUBE EQのようなユニークでプレミアムな製品も存在します。

ARTのEQ355、EQ341は普及価格帯のアナロググラフィックEQとして貴重な存在です。

アクティブスピーカーが主流のプロオーディオのモニタースピーカーもイコライザーを搭載しているものが一般的です。

ルームイコライザー

ルームコレクション(室内音響補正)はイコライザーと吸音パネルで解決」ではルームアコースティックの補正にイコライザーの使用がおすすめであることを書きました。この記事では、イコライザーなしでピュアオーディオが成り立たない理由と、ルームアコースティックに使うイコライザーの分類について書いています。

イコライザーなしのピュアオーディオで原音再生はできない

ピュアオーディオとは、どんなオーディオでしょうか?

もしも「何も足さない、何も引かない」がピュアオーディオだとしたら、

そしてスピーカーをメインに使用することがピュアオーディオだとしたら。

ピュアオーディオとは
リスナーが実際に聴いている再生音が、
”何も足さず、何も引かない”本来の状態であること

原音再生の条件

はじめに、原音再生とは何か?

原音再生には様々な解釈がありますが、記録メディアを再生して聴く音楽の場合は、記録メディアの情報を損なうことなく再現する事が原音再生です。※「あたかも目の前で演奏しているかの様」に聴こえるかどうかは送り手(制作者)の意図次第です。写実主義が絵画の表現手段の一部に過ぎないのと同じことです。

原音再生であるために最も重要な条件は、演奏表現が損なわれていない事

音楽には音の強弱があり、この強弱は演奏表現手段として大きな要素の1つです。強弱のつけ方(アクセント)はアーティストによって様々でアーティストの個性にもつながります。

もしも、再生する音楽のアクセントが記録メディア(ファイル・CD・レコード)の情報と異なっていたとしたら、もはや原音再生ではなくなってしまいます。

「そんな事、当たり前でしょ。しかもオーディオ装置でアクセントが変わるなんて有り得ない!」

なんて言われそうですが、特にスピーカーで聴く場合は極普通に起こり得る現象です。

演奏表現が損なわれる原因はオーディオ装置ではありません。部屋の反射音によるものです。

ベースギターのアクセントが妙な位置につく例を別記事(本来のダイナミクスで再生していると思いますか?)に記載しているのであわせてご覧ください。

イコライザーを使う理由

音楽再生のために丹念に音響設計された特別な専用ルーム(リスニングルーム)を設けることができれば、再生音を本来の音に近づけることは幾らかは可能になります。しかし、音響建築だけの技術で対処するには限界があります。

今日では、アナログ技術ではカバーしきれなかった緻密でフレキシブルな補正の技術がリーズナブルに製品化されています。

これらは主にホームスタジオや小規模商用スタジオを対象にした製品ですが、実は家庭で音楽再生する場合にも絶大な効果をもたらす製品です。

イコライザーはオーディオの浄水器

ピュアな水を求めて浄水器を取り付けます。フィルターで不純物を取り除きます。

ピュアな音はイコライザーによって手に入れます。再生音はルームアコースティックの影響でダメージを受け音質劣化するのでイコライザーというフィルターでろ過します。

”ピュアオーディオ”の名のもとにイコライザーが排除されたホームオーディオは機械の回路としてはピュアですが、濁った音をろ過できません。

”せっかくマスタリングされた音楽に手を加えるのはちょっとなあ”とお考えなら

スピーカーで音楽を聴く場合は、部屋の影響で不可抗力に音の周波数特性は歪んでいます。イコライザーを使って元の状態に近づけることができるので積極的に活用しましょう。

音楽に手を加えるだけがイコライザーの役割ではありません。

グライコだけがイコライザーではない

イコライザーといえばグラフィックイコライザーを連想されることが多いのですが、イコライザーにはもう1種類、パラメトリックイコライザーがあります。

部屋の反射音を回避するにはパラメトリックイコライザーが適しています。

下のリンクページでイコライザーによるルームチューニング前後の音を実際に試聴できます。

ルームアコースティック イコライザーの種類

ルームアコースティック イコライザー(ルームイコライザー)の種類と接続例については次の記事をご覧ください。

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