ありのままのサウンドクォリティ

ルームアコースティック:オーディオと部屋のディープな因果関係

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音質を語る上で「オーディオ半分、部屋半分」とは昔から語られていることです。”音はさえぎるものがあるとはね返る”性質があるため、スピーカーから放たれた音は室内で反射を繰り返し徐々に減衰します。リスナーはスピーカーからの直接音と部屋による反射音を同時に聴いているので、音質評価はスピーカーを含むオーディオ機器と反射音をミックスした音が対象になっています。

スピーカーを含むオーディオ機器の評価が人によって大きく異なる理由の大半は部屋(と聴いている位置)の音響特性の違いによるものです

オーディオ環境

直接音と反射音の関係はオーディオ再生に限った話ではなくあらゆる音が対象になります。動画再生は勿論のことDTMでスピーカーをモニターに使う場合も楽器を演奏する場合も話し声も全てが対象になります。(ヘッドホンやイヤホンは部屋の影響がないため対象外です)

オーディオシステムの要素

アパートの入居・退居を経験していれば、部屋にものがある時とない時で音の響きが大きく異なることに気づいた方もいらっしゃることでしょう。

目次

ルームアコースティックのグレード(部屋のオーディオグレード)

オーディオ機器に音質のグレードがあるように部屋にも音質のグレードがあります。オーディオ機器の場合は性能や好みの音色にあわせてグレードアップできますが、部屋の場合は少し視点を変える必要があります。

わかりやすく例えると、一般的な部屋は蛇口から出てくる水道水です。水道水はそのまま飲んでも危険ではないでしょうが、浄水器を使って匂いや不純物を取り除いて利用するのが一般的です。一般的な部屋では音源(スピーカーや楽器等)の反射音は、オーディオ機器や楽器のポテンシャルを損ねる不純物としての不名誉な役割を果たしています。通常の部屋はルームアコースティックが考慮されていないため、オーディオ機器の本来の音質グレードの大きな妨げになっている点で水道水と同じです。

オーディオ機器をどれだけグレードアップしたとしても部屋による不純物の混ざった音では音質は台無しになります。浄水器と同様に部屋の場合も不純物を取り除くことでオーディオ機器の本来の音質グレードを発揮できるようになります。

不純物が混入する原因は定在波と呼ばれる音の現象に起因します。不純物が混入した結果、標準体型(ソース本来の音)はいたるところに贅肉がまとわりついた肥満体型(原形を留めず濁って不鮮明な音)に変貌してしまいます。不純物を取り除くことで、浄水器を使ってピュアな水を得る以上の効果がてき面に現れます。

※定在波が音質的にどのようなデメリットをもたらすかについては「定在波:本来のスピーカーの音で聴くために解決すべき必須課題」をご覧ください。

オーディオシステムのグレード

ここでいうオーディオシステムとは、オーディオ機器とルームアコースティックの両方を総合した再生環境のことです。オーディオ機器のグレードが100点満点でもルームアコースティックのグレードが低ければオーディオシステムのグレードはそれなりになります。(同様にルームアコースティックのグレードが高くてもオーディオ機器のグレードが低ければオーディオシステムのグレードはそれなりになります。)

このようにオーディオにおいて一点豪華主義にはメリットがなく、オーディオ機器のグレードとルームアコースティックのグレードの優先度を考慮することが重要になります。結論としてはオーディオ機器はそこそこに留めておいて先にルームアコースティックに着手することが望ましいと言えます。そうすることでオーディオ機器のグレードアップが必要か否かの誤った判断を回避することができます。無駄な出費を抑えて音楽に浸れます。

オーディオシステムのグレード比較
  • オーディオ機器のグレードに比重が偏ったトータルバランスに欠けるオーディオシステムは費用がかさむばかりでパフォーマンスを発揮できない
  • オーディオ機器のグレードをそこまで高めなくてもルームアコースティックのグレードが高ければ十分なパフォーマンスを発揮できる
オーディオ機器は食材、ルームアコースティックは調理

オーディオシステムを料理で例えるならば、オーディオ機器は食材でルームアコースティックは調理です。食材にA5ランクの牛肉を使っても調理方法が悪ければ美味しい料理にはなりません。逆にそれほど高級な牛肉でなくても調理方法次第では高級食材を使った料理を凌ぐことができます。食材のポテンシャルを十分に引き出す調理が美味しい料理の秘訣です。

オーディオメーカーやショップは食材を提供する存在であって調理まではしてくれません。オーディオの調理のみを提供することも、食材と調理をセットで提供することも共に対応できるのがオーディナリーサウンドです。

料理とオーディオ

オーディオシステムの費用対効果

オーディオ機器の価格帯は実にワイドで上は青天井の状況です。中でもホームオーディオは趣味嗜好の要素が多分に含まれるため数千万~数億円の機器があっても仕方ないことですが高額=高音質とは限りません。ルームアコースティックのグレードを上げることによって、トータルで数百万円以下のオーディオ機器でハイエンドクラスのオーディオシステムを実現することができます。

ルームアコースティックの費用とは部屋の作用で発生する不純物(ソースに存在しない付帯音)を取り除くための費用です。ルームアコースティックの費用は手段によっては青天井になりますが、達成度を80%~90%に留めることでオーディオ機器に比べて非常に費用対効果の高いグレードが手に入ります。概ね百万円以内、やり方次第で数十万円台で実現可能です。

ルームアコースティックのグレードアップは費用対効果抜群のリーズナブルな手段です。

まとめ

ホームオーディオにまつわる情報はオーディオ機器(と周辺アクセサリー)に関することばかりですが、スピーカーで再生する場合の音質は部屋のオーディオグレードが絶対支配しています。

このことは音楽再生に限らず音楽制作でのモニタースピーカーやピアノ・ギターなどの楽器演奏にもあてはまり、マスタリングのクォリティや演奏の上達にも影響します。

ルームアコースティックはスピーカーや楽器のグレードに関係なく平等に作用します(低音再生能力が高いほど作用する度合いは高まります)。影響を受けないのはヘッドホン・イヤホンでのリスニングのみです。

ルームアコースティックに取り組むための費用は昔と異なりリーズナブルになっているので利用しない手はありません。

ネクスト ステップ

音楽再生を目的としたオーディオシステムのグレードの現状は、ルームアコースティックのグレードが不十分なことが原因でオーディオ機器に費やしたコストの割には低グレードであることが一般的です。

ルームアコースティックのグレードの現状を確実に知る方法は、リスニングエリアの音響特性を測定して可視化することです。聴いただけの印象では客観性に欠け、正しい評価はできません。

リスニングエリアの音響特性を測定して可視化したら更に次のステップはルームアコースティックのグレードアップです。測定すると問題点が手に取るようにわかるのでルームアコースティックを的確にグレードアップすることができます。

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