オーディオのライトサイド

レコードにはフォノイコライザー、スピーカーにはルームイコライザー

フォノEQ、ルームEQ

レコードフォノイコライザー(フォノアンプ)により本来の音に復元されるのと同じで、スピーカーはルームイコライザーにより本来の音に復元されます。レコードにフォノイコライザーを使うのは常識ですが、スピーカーにルームイコライザーが使われることはあまりありません。

この記事を読めばフォノイコライザーやルームイコライザーを使う理由がわかります。

目次

フォノイコライザー(フォノアンプ)の役割

レコード再生時にフォノイコライザー(フォノアンプ)を使わない人はいません。何故ならレコードにはレコード盤に記録するために必要なイコライジングされた音声が収録されているので、そのまま再生しても本来のソースの音声は再現されないからです。

次の図はレコード作成時のイコライジングカーブです。低音域に行くほど大きくカットされ高音域に行くほど大きくブーストされている様子がわかります。レコードにはこのように極端にイコライジングされた音声が入っているので、そのまま再生しても聴けたものではないことは容易に想像できます。

riaa-in

そこで、再生時に次の図のようなイコライジングカーブを使うことで、本来の音声に復元するのがフォノイコライザー(フォノアンプ)の役割です。

riaa-out

図のイコライジングカーブは、AudacityのEQフィルタ曲線を使って表示しています。

ルームイコライザーの役割

スピーカーで音声(音楽)を聴く時に使うのがルームイコライザーです。レコードがフォノイコライザーを使って本来の音声に復元できるのと同様に、スピーカーはルームイコライザーを使って本来の音声に復元することができます。

なぜスピーカーにルームイコライザーを使う必要があるのか?

レコードはレコードを作る時に意図的にイコライジングしているので、再生時に元に戻るように再びイコライジングするのは理の適ったことです。それではスピーカー再生時は誰も意図的なイコライジングをしていないのに何故ルームイコライザーを使う必要があるのでしょうか?

ルームイコライザーで復元しなければならない原因はスピーカーを再生している空間(部屋)です。部屋が意図せず元の音をイコライジングしてしまっているので、ソース本来の音に復元するためにルームイコライザーを使います

次の図はスピーカーで再生する時のリスニングポジションの周波数特性です。言い替えると、部屋は図のようなカーブで音楽をイコライジングしている、となります。

ルームイコライザー適用前の周波数特性
ルームイコライザー適用前の周波数特性

部屋に起因するイコライジングカーブは部屋によって異なります。

部屋に起因するイコライジングの影響を回避して本来の音声に復元するためにルームイコライザーを使ってイコライジングします。

ルームイコライザーのイコライジングカーブ
ルームイコライザーのイコライジングカーブ

フォノイコライザーとルームイコライザーの違い

レコードを作る時のイコライジングカーブは規格化されているため、フォノイコライザーもこれに基づいた一律のイコライジングカーブを与えれば事足ります。

ところが部屋によるイコライジングカーブは再生環境ごとに異なるため、ルームイコライザーは再生環境ごとにイコライジングカーブを持たせなければ元の音に復元することができません。(イコライジングカーブにプリセットを用意したとしても何の役にも立たないということです)

再生環境とは

再生環境の要素は大きく2つに別れます。1つは部屋そのもので、部屋の大きさ(幅、奥行き、高さ)や形状、部屋の材質(壁、床、天井)などが主な変動要素です。もう1つはスピーカーとリスナーの位置(共に平面座標と高さ)で、ステレオなら2台のスピーカーの位置・高さと向き(対リスナー)とリスナーの位置・高さ(耳の高さ)などが主な変動要素です。

つまり、同じ部屋でもスピーカーの位置やリスナーの位置によって、復元のためのイコライジングカーブは変わります。

フォノイコライザーとルームイコライザーの目的と効果は同じ

フォノイコライザーもルームイコライザーも事前にイコライジングされた意図しない音を本来の音に復元すると言う同じ目的の機器です。※双方に代用は利きません

フォノイコライザーなしでレコードを聴く機会はあまりないと思いますが、前述のイコライジングカーブを見るだけでもスカスカな低域とシャカシャカな高域であることは想像できることでしょう。(Korg NU IとAudioGateを使ってフォノイコライザーなしでレコード再生した時も想像どおりの音でした。)

部屋に起因するイコライジングは前述のとおり環境によってイコライジングカーブが異なるため一概にこのような音であるとは説明しようがありませんが、傾向としては躍動感に欠ける・不鮮明でこもった音・空気感を持たない・低音の特定の音域が強調される等のどれも有り難くない再生になってしまいます。(オーディオ機器の能力が大きく削ぎ落されているということです。)

繰り返しになりますが、レコード再生にフォノイコライザーが必需品であるように、スピーカー再生にルームイコライザーは必需品です。ルームイコライザーの恩恵を体感するともう後には戻れなくなります。今まで聴いていた音は何だったんだろうと思うようになります。

オーディオルームの主役はオーディオ機器

部屋に起因するイコライジングを回避する伝統的な手法に、音楽鑑賞のための専用室(オーディオルーム)を持つという方法があります。部屋に起因するイコライジングが極力起きないように設計されたオーディオルームは理想的と思えますが、音楽を聴く主役であるはずのリスナーがオーディオルームを訪問するといった主客転倒の状況になってしまいます。更にオーディオ機器の位置変更・機種入れ替えなどにより最適化したはずの設計を再設計しなければならない場合も起こります。もっとも、オーディオルームは誰にでもは持てないので大抵は絵に描いた餅にすぎません。

ルームイコライザーを使えば、リスナー主導で書斎でもリビングでも寝室でも聴きたい場所で音楽を楽しむことができます。ルームイコライザーはイコライジングカーブをいくつでも作れるので、オーディオルームと異なり環境に合わせてフレキシブルに音の復元化に対応できます。引っ越しにも単身赴任にも追従してくれます。

ルームイコライザーを使う場合も吸音材類とのハイブリッドな対策は有効な手段です。

関連情報

ルームイコライザーの効果を聴いてみてください。

ルームイコライザーはどのようなオーディオシステムにも組み込める程の豊富な形態があります。

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