理想的な音楽再生に求められる要素とは
- 高性能なスピーカーの使用
- ルームアコースティック対策
- ローカルライブラリーとストリーミング配信の共存
- 優れたアクセシビリティの音楽ライブラリー構築
- 音源への自由なテイスティング
- シンプルな機器構成
高性能なスピーカーの使用
理想的な再生システムで聴けば、多くの音源が思った以上に高音質で収録されていることに気付きます。音源のポテンシャルを引き出すために最初にやるべきことは高性能なスピーカーを使用することです。
高音質でなくても音楽の感動は享受できますが、高音質(本来の音)で聴くことでその感動はより深いものになります。家庭でも高レベルで再現できる動画・静止画再生に比べると音楽再生はまだまだその域に達していません。
音源よりもスピーカーにコストを掛けよ
2000曲のダウンロード音源をロッシー(AAC 320kbps)で1曲ずつ購入すると約50万円かかります。ハイレゾ(24bit/96kHz)の場合は約100万円です。
予算が110万円ならロッシーの場合は60万円(110万-50万)のスピーカーが購入できますが、ハイレゾの場合は10万円(110万-100万)のスピーカーになります。
10万円のスピーカーでハイレゾ音源を再生するよりも、60万円のスピーカーでロッシー音源を再生するほうが幸せになれます。
2000曲の音源 | スピーカー | 総額 |
ロッシーだと約50万円 | 60万円 | 110万円 |
ハイレゾだと約100万円 | 10万円 | 110万円 |
ADAM AUDIOのラインナップの場合、ロッシーならフラッグシップのS2V(49.5万円)が選べますが、ハイレゾの場合に選べる上限はエントリークラスのT8V(7.26万円)です。
ルームアコースティック対策
オーディオ装置にどれだけコストを掛けてもルームアコースティックに不備があれば装置のポテンシャルを発揮できずパフォーマンスは半減してしまいます。
はじめからルームアコースティック対策の施された部屋が理想的ですが、ほとんどのリスナーにとって現実的な手段ではありません。デジタル処理によるルームチューニングは、コスト面だけでなく部屋環境の変化に柔軟に対応してくれるモダンでインテリジェントな解決策です。比較的導入が容易な吸音パネルセットとの併用も有効な手段です。
勘にばかり頼っていては、いつまでたってもゴールに辿り着けない
オーディオとは不思議なもので、テクノロジーが発達した現在でもユーザーにおいては耳に頼ったチューニングが主流です。しかし、よほど訓練された専門のエンジニアでない限り(またはずば抜けた天性を持っていない限り)は、部屋の問題点を正しく察知することは不可能です。
測定用のマイクとソフトウェアは誰にでも公平に部屋の問題点を視覚的・数値的に知らせてくれます。昔は高価で個人入手は現実的ではありませんでしたが、今日は個人でも入手可能なマイクやソフトウェアがあるのでこれを使わない手はありません。
原因を明確にした後に問題解決に挑むと、負のスパイラルを回避できます。
プロレベルの高精度を安価に提供するiSEMconはリスナーにとって心強いアイテムです
ローカルライブラリーとストリーミング配信の共存
音楽再生メディアの主流は既にCDからネット配信サービスに移行しています。また、ネット配信の中ではダウンロード配信からストリーミング配信に移行がすすんでいます。
ストリーミング配信サービスで提供される楽曲数は大手のサービスで数千万曲にもおよび、もはや楽曲を購入する時代は終わったかのようにも思えます。
しかし実際のところは愛聴盤の一部が配信されていないことも少なくないので、今しばらくはローカルに所有する音源とストリーミング配信を共存することになりそうです。
加えてストリーミング配信サービスを未来永劫受けられる保証はなにもありませんから、これぞといった愛聴盤はローカルメディアとして手元に所有することになりそうです。配信サービス業者が存続しても、配信されていた楽曲が聴けなくなった事例を経験している事も手元に所有する理由の一つです。
ストリーミング配信サービスとローカルメディア(音楽ファイル)を共に再生できる最も優れたプレーヤーはPC(Win/Mac)です。新しいサービスや技術にいち早く対応しているのはいつでも専用機器ではなくPC(またはモバイル機器)ですし、パーツ・周辺機器の拡張やアップグレードによってフレキシビリティとライフサイクルを保てる点でも専用機器に勝っています。
優れたアクセシビリティの音楽ライブラリー構築
聴こうとする音楽にはすぐさま辿り着きたい。複数のメディアに保存されている場合、ともすると聴きたい曲が音楽ファイルにあるのかレコードにあるのかわからなくなってしまう可能性すらあります。
CDやレコード、テープなどのレガシーメディアは時間を惜しまずに音楽ファイルへとメディア変換しましょう。音楽ファイルにしておけばPCで音楽ライブラリーを一元管理できるようになり目的の音楽にすぐさま辿り着けるようになります。
音楽ファイルはタグ情報を活用することでフレキシブルなライブラリー管理が実現します。CDやレコードはジャンル別>アーティスト別など一つのルールに従って整理するしかありませんが、音楽ファイルは様々な分類方法に瞬時に並べ替えてくれます。
PCレスとされるネットワークオーディオの場合も結局はPCを使わない訳にはいきません。タグ編集もCDリッピングもレコードからの録音もPCが最も頼もしいツールとなります。
レコードを高品位にデジタル化するフォノイコライザー
音源への自由なテイスティング
高性能なスピーカーを使いルームアコースティック対策ができたとしても音源によっては何か物足りなさを感じる場合があります。お気に入りの曲だけど音質的にパンチに欠けている、空気感や艶が欲しい、等々です。
このような場合に従来であればプリアンプなどを挟んでテイスティングする方法がとられてきました。特に真空管やトランスによる音色変化が効果的で何十年も前のヴィンテージ機器が重宝されたりしていますが問題点も少なくありません。
今日ではソフトウェアによる様々な名機のエミュレーターが登場しPC上で利用することができます。「これを通すだけで音が良くなる」と言われる入手困難な名機の恩恵を手軽に受けることができます。プロオーディオの世界では以前からスタンダードな存在として使われていますが、ホームオーディオにも使わない手はありません。
関連記事:PCとオーディオインターフェイスが叶えるビンテージ・プレミアム・サウンド
シンプルな機器構成
以上の要素を満たすために数多くの機器が必要になってくるとユーザビリティも低下してしまいます。
モノ(オーディオ機器)はシンプルに、コト(リスニング)は豊かでありたいものです。
リファレンス次世代システム
- ADAM AUDIO S2V
- UNIVERSAL AUDIO Apollo x6
- Apple Mac mini MRTR2J/A
このたった3つのアイテムだけで先の「求められる要素」を満たしてくれます。※マイクその他周辺機器は別途必要です
ADAM AUDIO S2V
システムの要となるスピーカーは、ADAM AUDIOのフラッグシップ・ニアフィールド・モニターS2Vです。
他にも高性能・高音質なスピーカーとしてHEDD Type 20 MK2やAmphion Two 18などが有力候補となりますが、先の「求められる要素」のうち「1.高性能なスピーカーの使用」ばかりか「2. ルームアコースティック対策」にも対応し結果的に「6. シンプルな機器構成」につながるS2Vを特に推奨します。
UNIVERSAL AUDIO Apollo x6
Apollo x6はオーディオインターフェイスの中で最も人気の高いUNIVERSAL AUDIOのフラッグシップApollo Xのラックマウントモデルです。Apollo Xラックマウントモデルは他にも入出力数の違いでx8、x8p、x16がありますが、リスニング用途においてはx6で十分です。
Apollo x6により先の「求められる要素」のうち「2. ルームアコースティック対策」、「4. 優れたアクセシビリティの音楽ライブラリー構築」と「5. 音源への自由なテイスティング」を実現することができ結果的に「シンプルな機器構成」にもつながります。
Apollo x6はDACの役割も果たしますが、DACには非搭載のADC機能により「2. ルームアコースティック対策」では測定時のマイク入力として、「4. 優れたアクセシビリティの音楽ライブラリー構築」ではレコードやテープなどのデジタル化に利用することになります。
※Apollo x6は高品位なマイクアンプを搭載しているので別途マイクアンプを用意する必要はありません。アナログ入力はマイク入力(2ch)以外にもバランス/アンバランス対応のライン入力(6ch)があるためステレオソースばかりか5.1chソースを録音することさえ可能です。フォノイコライザーは搭載していないので、レコードの場合は前述の単体フォノイコライザーを経由させます。
ここまではLynxなど他のオーディオインターフェイスを選んでも構いませんが、「5. 音源への自由なテイスティング」のためにはApollo x6をはじめとしたUNIVERSAL AUDIOのオーディオインターフェイスの独断場となります。
テイスティングには従来であれば別途プリアンプなどのハードウェアを使うことになりますが、Apollo x6は内蔵のDSP6基に自由に読み込ませることのできるエミュレータ・プラグインが100種類以上も取り揃えられています。コスト面でも設置スペース面でもメンテナンス面でもハードウェアを凌駕するばかりか、ハードウェアでは入手不可能なヴィンテージ&プレミアムなものさえ手に入れることができす。
Apple Mac mini MRTR2J/A
昨年末に久々にリニューアルしたMac miniはシステムの司令塔としての役割を担います。
「2. ルームアコースティック対策」ではRoom EQ Wizardなどの測定アプリやADAM S2VのDSPをリモート操作するために使用します。
「3. ローカルライブラリーとストリーミング配信の共存」ではSpotifyやJRiver Media Centerなどのアプリを使用します。
「4. 優れたアクセシビリティの音楽ライブラリー構築」ではAudacityなどの波形編集ソフトを使ってアナログ/デジタルソースを録音します。
「5. 音源への自由なテイスティング」ではApollo x6の多彩な機能にアクセスする際に使います。
この中で「5. 音源への自由なテイスティング」を除けばWindowsマシンでも構わないのですが、「5. 音源への自由なテイスティング」を実現するためにApollo x6その他Apollo Xラックマウントモデルを選択する場合はMacが圧倒的に有利になります。UNIVERSAL AUDIOのオーディオインターフェイスの多くはThunderboltでPCに接続するためWindowsの場合は環境次第で思うように動作しない場合がありますが、Tunderbolt3を搭載したMacであれば苦労せずに使えるようになるからです。※最新macOS Catalinaはまだサポートされていませんが、これはUNIVERSAL AUDIOに限った話ではありません。もうすぐ対応すると思われます。UAD ソフトウェア 9.11.1(Mac Only) のリリースによりようやくCatalinaに対応しています。(2020/4/16)
オーディナリーサウンドが提唱するモダンオーディオの概念図
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