オーディオのライトサイド

バランス接続端子とオーディオケーブル:種類と接続事例

ホームオーディオでは一般的に普及機=アンバランス、高級機=バランスですが、オーディオインターフェイスやアクティブモニタースピーカーは普及機においてもバランス接続に対応した機種が主流です。また、DAPや低価格のDACもバランス接続に対応した機種が増えてきました。

この記事を読めば、オーディオ機器のバランス接続端子の種類と接続するケーブルがわかります。

  • AI-1:2万円台のオーディオインターフェイス
  • Diamond studio 5-BT:3万円台のパワードスピーカーなど低価格ながらバランス接続に対応。
  • ZEN DAC:4.4mmバランスに対応したUSB DAC。
目次

バランス接続のメリット

バランス接続(XLRケーブル)は高価なだけで利用価値はない?

「家庭でリスニングに使うオーディオ機器の接続はRCAケーブル(アンバランス接続)で十分。高価なXLRケーブルを使うメリットはない。」との考えがありますが本当でしょうか。

確かに短いケーブルで配線可能で更に外来ノイズの影響を受けなければ、アンバランス接続で十分と言うこともできます。

ただし、PCオーディオをはじめとするデジタルオーディオを取り入れる場合は、ケーブルが外来ノイズを拾う可能性が高いためバランスケーブルを使った方がノイズ対策として有利です。

※過去に、PCに接続したUSB DACをアンバランス(RCAケーブル)で出力すると発生するノイズがバランス接続(XLRケーブル)に変更することで改善した経験があります。

バランスケーブルは高価?

家電量販店やオーディオ専門店でXLRケーブルは高価ですから高級品のイメージがありますが、実はこのような店で売られているRCAケーブルよりも安価で高品質なXLRケーブルやその他のバランスケーブルは沢山あります。

上記を踏まえると、アンバランス接続にノイズ対策のアクセサリーを使うよりも、バランス接続のほうが不要なアイテムを排除し安価に済むのかもしれません。

気を付けたいのは大型ネットショップで見かける見栄えは良さげだが異常に安く無名なXLRケーブルです。見かけはバランスケーブルでも内部結線はアンバランス接続のものもあるようです。

バランス接続のメリットについて

バランス接続のメリットは外来ノイズを受けにくいことです。ノイズが侵入してもノイズを打ち消し合う仕組み(ノイズキャンセリング)のケーブルです。音質云々というよりもノイズに強い事がバランス接続のメリットです。ライブやコンサート会場でバランスケーブルが使われる理由は、必然的に長いケーブルを使わなければならない(これによりノイズを拾いやすくなる)事に対するノイズ対策です。

バランス接続端子の種類

オーディオ機器のバランス接続端子の主な種類は3種類で、XLR / 6.3mmTRS / 4.4mmバランスです。コンボジャックはXLRプラグでも6.3mmバランスプラグでも接続可能なバランス入力端子(ジャック)です。

バランス接続端子の主な種類
  • XLR
  • 6.3mmTRS
  • 4.4mmバランス

XLR

XLRはスタンダードなバランス接続端子です。

特徴

XLRは出力にはオス端子が入力にはメス端子が使われます。オーディオ機器の出力端子(オス)をケーブルのメス端子に、オーディオ機器の入力端子(メス)をケーブルのオス端子に接続します。
オス端子をXLR(M)、メス端子をXLR(F)と表記されていることもあります。

注意点

XLR端子は3ピン(極)になっていて通常は1:グラウンド、2:ホット、3:コールドですが、オーディオ機器の中には2番と3番が逆(2:コールド、3:ホット)の仕様のものもあるため接続前に確認しておきましょう。

論外の話ですが、XLR端子で接続していてもバランス接続にはなっていない場合があることも知っておきましょう。どういうことかと言うと、3番コールドのピンが結線されていない実質的にアンバランス接続のXLR端子のオーディオ機器やオーディオケーブルが存在しているということです。これではバランス接続のメリットであるノイズ対策には何の効果もありません。

6.3mmTRS

6.3mmTRSは主にオーディオインターフェイス等で使われるバランス接続端子です。

特徴

ホームオーディオで古くから使われている6.3mmTRSはヘッドホン端子ですが、6.3mmTRSはバランス接続端子としても使われます。ヘッドホン用に使う場合はアンバランスのステレオ信号が流れますが、バランス接続用の場合はホットとコールドのモノラル信号が流れます。XLRと端子の形状が異なるだけで同じ種類のケーブルが利用できます。

注意点

6.3mmTRSはXLRと同じく3極で、T(tip):ホット、R(ring):コールド、S(sleab):グラウンドですが、ケーブルによってはTとRが逆(T(tip):コールド、R(ring):ホット)の仕様のものがあるため接続前に確認しておきましょう。※過去にオーダーケーブルでこのような事例を体験しています。


コンボジャック

コンボジャックとはXLRオスプラグでも6.3mmTRSプラグでも接続可能なバランス接続端子です。多くのオーディオインターフェイスや一部のアクティブモニタースピーカーで採用されています。

コンボジャック

オーディオ機器によっては6.3mmTRSバランスに加えて6.3mmTSアンバランスに対応していたり、中には6.3mmはTSアンバランスのみ対応であったりします。

コンボジャック搭載機

左:パワードスピーカー Diamond Studio 5-BT (Wharfedale Pro)
中:アクティブスピーカーiLoud MTM (IK Multimedia)
右(上より):オーディオインターフェイス AI-1 (RODE)、evo 4 (AUDIENT)、USB MIX 4 (ART)

4.4mmバランス

ポータブル機器やエントリークラスのホームオーディオ機器では4.4mmバランス接続端子が採用されている機種もあります。

特徴

4.4mmバランスをわかりやすく説明すると、ポータブル機器やヘッドホン端子に使われる3.5mmステレオ(アンバランス)のバランス版であると言えます。どちらも1本のケーブルでステレオ信号が流れる点が、RCA、XLR、6.3mmTRSと異なります。

バランスケーブル接続

XLR to XLR

オーディオ機器のXLR出力端子とオーディオ機器のXLR入力端子を接続するには両端がXLR端子のケーブルを使います(一般的にXLRケーブルと呼びます)。XLRケーブルはRCAケーブルと異なりケーブル両端の端子形状が異なるため、接続機器の端子に合わせてケーブル接続します。

BLUE SUEDE OVAL

XLRケーブルに慣れていないと出力側と入力側で端子形状が異なることが面倒に思われるかもしれませんが、XLRケーブルは入出力で端子形状が異なることにより変換アダプターなしでカスケード接続できるメリットがあります。短いケーブルをカスケード接続して長いケーブルとして利用することができます。

XLRケーブルが使われる主なシーン

XLRケーブルが使われるシーンは、DAC(またはオーディオプレーヤー)とアンプ(またはアクティブモニタースピーカー)、マイクとオーディオインターフェイス(またはマイクアンプ)など様々です。前述のとおり、バランス信号の極性を予め確認しておきましょう。

XLRケーブルはマイクケーブルとも呼ばれますが特に違いはありません。

XLRケーブルはRCAケーブルと同様に1チャンネルあたり1本のケーブルを使いますからステレオであれば2本のケーブルを使います。

下図はXLRのバランス入出力端子を持つヘッドホンアンプ2機種(Pro iCAN Signature、Nmode X-HA3 FT)の接続例です。

入力端子:XLRメス(female)ジャック、出力端子:XLRオス(male)ジャック

XLRのバランス接続
※図中のケーブル先端コネクター:HI-X3CM-HD、HI-X3CF-HD

DACとパワーアンプ、DACとアクティブモニタースピーカー、マイクとオーディオインターフェイスの接続例

XLR接続例
XLR端子の接続例
DAC:NEO iDSD、パワーアンプ:Wharfedale Pro DP 4035、アクティブスピーカー:HEDD TYPE 05 MK2
オーディオインターフェイス:RODE AI-1、マイク:sE2200

TRS to XLR

オーディオ機器のTRS出力端子とオーディオ機器のXLR入力端子を接続するには片方がTRS端子でもう片方がXLRオス端子のケーブルを使います。

VAB 3MX / 3FX
VAB 3MX / 3FX

TRS to XLRケーブルが使われる主なシーン

オーディオインターフェイスのバランス出力端子の多くは6.3mmTRSで、主な出力先であるアクティブモニタースピーカーやパワーアンプのバランス入力端子の多くはXLRです。

TRS to TRS

オーディオ機器のTRS出力端子とオーディオ機器のTRS入力端子を接続するには両端がTRS端子のケーブルを使います(一般的にTRSケーブルと呼びます)。

VAB 3P (TRS) / 3P (TRS)
VAB 3P (TRS) / 3P (TRS)

6.3mmTRSバランスケーブルの接続としては、オーディオインターフェイスとボリュームコントローラーの接続等があります。

TRS接続例
左:オーディオインターフェイス RODE AI-1、右:バランスボリュームコントローラーBaby RAM(Heritage Audio)

TRSケーブルはRCAケーブルと同様に1チャンネルあたり1本のケーブルを使いますからステレオであれば2本のケーブルを使います。

XLR to TRS

オーディオ機器のXLR出力端子とオーディオ機器のTRS入力端子を接続するには片方がXLRメス端子でもう片方がTRS端子のケーブルを使います。

VAB
VAB

XLR to TRSケーブルが使われる主なシーン

オーディオインターフェイスのバランスライン入力端子の多くは6.3mmTRSです。XLR出力端子のプレーヤーをオーディオインターフェイスに接続してパソコンでデジタル保存したりオーディオインターフェイスをプリアンプとして使う場合に、XLR to TRSケーブルを使います。

 XLR to TRS/ TRS to XLR接続例
上:USB DAC Benchmark DAC3、中:ボリュームコントローラーBaby RAM(Heritage Audio)、下:アクティブスピーカー ADAM S2V

上の画像では、DAC(固定出力)のXLR出力とボリュームコントローラーの6.3mmTRS入力を接続しています。さらに、ボリュームコントローラーの6.3mmTRS出力とパワードスピーカーのXLR入力を接続しています。


プラグ形状の選択が標準仕様のケーブル

両端のプラグ形状を選択指定できるケーブルは、接続する機器の端子形状に合ったケーブルを容易に入手することができます。Analysis Plusのアナログオーディオケーブルなら、TRS – XLR(M)やXLR(F) – TRSなど長さ指定も含めた柔軟なケーブルが手に入ります。

お役立ちツール

HOSAのケーブルチェッカーを使うと、バランスケーブルの極性を簡単に確認することができます。豊富な接続端子でアンバランスケーブルにもUSBケーブルにもLANケーブルにも対応します。

4.4mmバランス to 4.4mmバランスケーブル

4.4mmバランス出力端子のオーディオ機器どおしを接続するには、4.4mmバランス to 4.4mmバランスケーブルを使います。

4.4mm to 4.4mm cable
4.4mm to 4.4mm cable

iFi audioのZEN DACとZEN CANとのバランス接続などがあります。

4.4mmバランス端子の接続としては、DAC以外にもBluetoothレシーバーやフォノイコライザーとプリアンプ&ヘッドホンアンプの接続等があります。

4.4mmバランス接続例
左(上より):ZEN BlueZEN Phono (iFi audio)
右;ZEN CAN (iFi audio)

4.4mmバランス to XLR(または6.3mmTRS)ケーブル

4.4mmバランス出力端子のオーディオ機器(iFi audioのZEN DAC、ZEN CAN等)とXLR(または6.3mmTRS)入力端子のオーディオ機器を接続するには、4.4mmバランス to XLRオス(または6.3mmTRS)ケーブルを使います。

4.4mmバランスは1つの端子で左右2チャンネルですから、XLRや6.3mmTRSバランスに変換するには左右チャンネルを2つのプラグに分岐するケーブル(Yケーブル)の形状になります。

※アンバランスで3.5mmステレオをRCAプラグ2つに変換するYケーブルはよく見かけますが、このYケーブルのバランス版ということになります。

4.4mmバランス to 6.3mmTRSバランスケーブルの代用

Top WingのWhite Barrel 4.4TRSは、4.4mmバランス出力機器と6.3mmTRSバランス入力機器を接続する希少なケーブルですが販売終了になりました。

利用シーンの代表例としてiFi audio ZEN DACと簡易アクティブスピーカー(アンプ内蔵パッシブクロスオーバースピーカー)JBL 104-BT-Y3がありますが、4.4mmバランス to XLRケーブルとXLR to TRSケーブルを使うことでWhite Barrel 4.4TRSの代用になります。

XLR to TRSケーブルの代わりに変換アダプターのHOSA GXP-143を使う方法もあります。

GXP-143
HOSA GXP-143

XLR to 4.4mmバランスケーブル

ZEN CANのバランス入力端子は4.4mmバランス端子ですから、ZEN CANにバランス入力する場合はXLRメス(または6.3mmTRS)- 4.4mmバランスケーブルを使います。

White Barrel
White Barrel (TOP WING)
XLR to 4.4mm接続例
上:XI AUDIO SagraDAC、中:ZEN CAN Signature、下:Wharfedale Pro DP 4035
XLR to 4.4mmバランスケーブルの代用

Top WingのWhite Barrel 4.4XLR-Fは、XLRバランス出力機器と4.4mmバランス入力機器を接続する希少なケーブルです。

既に4.4mmバランス to XLRケーブルを所有していればXLRオスプラグをXLRメスプラグに変換するアダプターHOSA GXX-145を使うことでWhite Barrel 4.4XLR-Fの代用になります。

XLR変換アダプター
HOSA GXP-145

バランス アンバランス変換

バランス出力機器をアンバランス入力機器に接続したい場合は、バランス信号をアンバランス信号に変換するためのアダプターを使います。

ART Clean Box Proは、XLRで入力したバランス信号をアンバランスに変換してRCA、3.5mmステレオで出力します。

Clean Box Pro
Clean Box Pro

アンバランス バランス変換

アンバランス出力機器をバランス入力機器に接続したい場合は、アンバランス to バランス変換アダプターを使います。

ART Clean Box Proは、RCA、3.5mmステレオで入力したアンバランス信号をバランスに変換してXLRで出力します。

アンバランス バランス変換
ART Clean Box Proは、アンバランスをバランスに変換して出力する他にも音量調整が可能なため、アンプ内蔵モニタースピーカーやパワーアンプの接続に適しています。

FAQ

バランス接続とは何ですか?

プラスとマイナスの2系統で音声信号を伝送する方式のことです。
バランスケーブルを使って出力機器と入力機器を接続します。

バランス接続にはどんなメリットがありますか?

外来ノイズに強いことです。プラスとマイナスによるノイズキャンセリング効果があります。長いケーブルを使う場合は特に有効です。

XLR端子とは何ですか?

バランス接続に使われる標準的な端子(コネクター)です。
XLR端子は出力にオス端子が、入力にメス端子が使われています。

関連情報

おすすめのバランスケーブル

オーディオケーブル全般については次の記事をご覧ください。

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