PCオーディオ中級編
iTunesの普及により音楽CDをPCに取り込んで音楽を楽しむようになりました。その後にPCを従来のオーディオ機器に接続して高音質再生するためのDAC(USB DAC等)が登場し、音楽再生ソフトと共に使って音楽を聴くスタイルは“PCオーディオ”と呼ばれるようになりました。
PCは音質面でも利便性でも従来のプレーヤーを凌駕しているので、PCならではの特性を活用して音楽再生に役立てましょう。
オーディナリーサウンドではMacを含めでPCと呼んでいます。他所では”Mac/PC”のようにMacとWindows PCは区別されたりしますが、PCオーディオに対してMacオーディオと呼ばれることはありません。Macもパーソナルコンピューター(PC)である点はWindows PCと同じです。
専用プレーヤーに勝るとも劣らない音質と拡張性
音質の要となるDACは自由自在に選択可能
PCは音楽再生には有り余るほどの処理能力を持っているため、プレーヤーとしての音質はデジタル アナログ コンバーター(DAC)に大きく委ねられます。PCに使えるDACは潤沢に揃っているので予算や音質、機能に合わせて柔軟に選択できます。そればかりか、複数のDACをPCに接続して用途に応じた使い分けも可能です。
USB入力、PCM・DSD・MQA対応のiFi audio ZEN DAC
USB・Bluetooth・S/PDIF入力、PCM・DSD・MQA対応のiFi audio NEO iDSD
USBでパソコンにも対応するDACの頂点
音楽ファイル形式には実に様々の種類がありますが、次のファイル形式が一般的です。
- WAV
- FLAC
- ALAC
- mp3
- AAC
他にもDSD、MQA等がありますが、これらを再生するには対応したDACを使う必要があります。
S/PDIFやAES/EBUなどレガシーなデジタル入力しか持たずPCと接続できないDACでも、俗にDDCと呼ばれるPCの再生音をS/PDIFで出力するデバイスを使ってPCに対応させることができます。デジタル音声出力に対応したUSB DACやオーディオインターフェイスをDDCとして利用することもできます。
- 1万円切りでUSB DAC/DDCとして利用できるFiiO E10K Type-C
- アナログ入出力の他にS/PDIF(光)で入出力可能なオーディオインターフェイスAUDIENT EVO 16とiD44
”DDC”という用語は妥当ではない。-その理由-
ホームオーディオの世界では、PCのUSBオーディオ出力をS/PDIF等のデジタル音声出力に変換する機器や機能のことを慣習的にDDCと呼んでいます。デジタル – デジタル コンバーターです。
PCがオーディオとしてデジタル音声を出力するだけの装置であると捉えればDDCでも差し障り無いのですが、PCはデジタル音声をUSB等から入力する装置でもあります。また製品としてS/PDIF等のデジタル音声入力をUSBに変換してPCに出力する装置(オーディオインターフェイス等)が存在します。これもデジタル – デジタル コンバーターと呼ぶことができるため、DDCと言った時にUSB to S/PDIFを指しているのか、S/PDIF to USBを指しているのか区別がつかなくなります。(なのでオーディオインターフェイスのデジタル入力をDDCと呼ぶようなことはありません)
俗に言うDDCは正しくは”USB to S/PDIF”です。
パソコンだからパーツの選択も自由
パソコンをプレーヤーに使うメリットの1つは内部パーツを自分で交換できることで、専用プレーヤーでは到底真似できません。メモリーやストレージの交換や増設はプラモデル以上に簡単でレゴブロック感覚でできますし、場合によってはCPUや電源の交換まで可能です。※ノートPCをはじめパーツ交換は機種によっては制限があります。
充実したノイズ対策アクセサリー
パソコンをオーディオに使う場合によく問題視されるのがノイズです。パソコンはオーディオの為のデバイスではありませんからオーディオ機器と比べてノイズ対策されていないのは当たり前のことですが、個人的には長年パソコンを音楽再生に使ってきてノイズが問題になったことはありません。パソコン由来のノイズが気になるならノイズ対策のアイテムが豊富に揃っているのでこれで解決できます。
再生機能とライブラリー管理を一本化した音楽を聴くためのプレーヤー
従来の音楽再生専用プレーヤーとの決定的な違いは?
CDプレーヤーやレコードプレーヤーとPCプレーヤーとは決定的な違いがあります。従来の専用プレーヤーは、再生したい音楽の入ったメディアを都度装着して再生します。他の音楽を聴くにはメディアを入れ替える作業が入ります。音楽ライブラリーが増えてくるとメディアを収納するラックなどを使って聴きたい音楽に辿り着きやすいように置き方を工夫します。
つまり、従来の専用プレーヤーの役割は再生に特化していて音楽ライブラリーの管理までは構ってくれませんから別途手作業でライブラリー管理しなくてはなりませんが、どんなに工夫を凝らしても思うようにメディアを整理するには限界があります。
一方でPCプレーヤーの場合は、音楽再生と楽曲管理が一体化された音楽再生ソフトとして提供されます。はじめからプレーヤーの中に音楽ライブラリーがセットされているので、席を離れることなく別のアルバムを聴くことができます。従来のディスク(CD・レコード)とそれを収納するラックは手のひらサイズの大容量ストレージ(SSDやHDDなど)に置き替わり、ストレージはパソコンにビルドインすることも外付けにすることも自由です。
ディスクの収納スペースが不要になる点も大きなメリットです。
音楽再生ソフトの楽曲管理機能には曲を見つける様々な手段が用意されているので楽曲に簡単に辿り着けます。
音楽ファイルに埋め込まれるメタデータ(タグ情報)を元にパソコンの音楽再生ソフトが生成するデータベースは、前述のとおりCDやレコード等の楽曲管理では実現不可能なスマートな楽曲管理を提供してくれます。演奏者・作曲者・リリース年等で絞り込んだアルバム一覧を瞬時に提示してくれるのはパソコンならではの離れ業です。ネットワークオーディオでもこれに近いことはできますが、情報管理を得意とするパソコンの優位性は想像に難くありません。
楽曲管理の柔軟性の高さは音楽再生ソフト次第ですが、特出しているのはWindowsのTuneBrowserです。PCオーディオにMacを使うなら、TuneBrowserには劣りますがJRiver Media Centerが有力候補となります。
別のアルバムに入った楽曲の連続再生を実現
音楽の聴き方は自由でありたいもので、必ずしもアルバムを曲順に聴くとは限りません。CD/レコードプレーヤーでは、次に聴きたい曲が別アルバムに入っている場合は必ず再生を一旦止めてメディア(ディスク)を入れ替えなければなりません。
PCプレーヤーならどのアルバムに入った曲であるかは関係なく聴きたい曲を次々に選ぶだけで連続再生します。丁度カラオケで次の曲を予約する感覚です。これとは別にお気に入りの曲を1つにまとめたプレイリストを作っておけば、オリジナルのアルバムのできあがりです。※これらの機能は音楽再生ソフト次第です
録音機能を追加して音楽ライブラリーをファイルに一元化することも
音楽再生ばかりがPCオーディオの得意技ではありません。PCは音楽を作る人にも聴く人にも万能な優れモノで録音も得意技の1つです。CDはリッピングによりディスクからファイルにスマートにメディア変換できますが、CD以外のメディアはリッピングできませんから録音して音楽ファイルに変換します。
レコードやテープ・MDなどを音楽ファイルに変換することで、異なるメディアに入っていたあらゆる音楽をPCプレーヤーで一元管理して再生できるようになります。
CDプレーヤー代わりにパソコンを使うこともできるが…
光学ドライブを搭載たパソコンは、CDプレーヤーと同じく音楽CDを再生できます。CDプレーヤーが壊れても代用として使うことはできますが、ディスク単位で出し入れしなければならない点を含めパソコンのメリットを活かせないためリッピングしてファイルに変換することをおすすめします。
卓越したリモート操作
音楽プレーヤーにとってリモート操作も欠かすことのできない重要な要素であることは、歴史を振り返っても明らかです。レコードは再生を開始するにも終了するにも席を立ってプレーヤーを操作しなければなりません(オート機能搭載機を除く)。CDプレーヤーの登場でリモコンが普及し、席を離れずに再生・停止できるばかりか別の曲を再生できるようにもなりました。
PCプレーヤーでリモート操作に対応した音楽再生ソフトを使うと、スマホやタブレットを卓越したリモコンとして使えるようになります。PC本体での再生と遜色のない操作を席を離れることなく実現します。再生中にアルバムアート(ジャケット写真)を大きく表示したり歌詞を表示する・楽曲情報を表示する等、音楽を聴く楽しさを広げてくれるのも魅力です。
全ての音楽再生ソフトがリモート操作に対応しているわけではありません。
目的に応じた複数の音楽再生ソフトの使い分けも自由自在
PCは複数の音楽再生ソフトを使い分けることができる点も従来の専用プレーヤーにないメリットです。これを専用プレーヤーで実現しようとすると費用もスペースも大きくかさみます。
複数の音楽再生ソフトを使い分ける場合でも、音源となる音楽ファイルは1つのファイルを共有できるので無駄も生じません。
音楽サブスクもいち早く対応
今後(既に?)主流となるであろう音楽サブスクは楽曲を所有しない新しい音楽の聴き方を提供してくれますが、ソフトウェアでサービスにいち早く対応できる点はパソコンならではのメリットです。
音楽サブスク対応の専用プレーヤーも存在しますが、PCに比べると対応の早さや機能面で劣ってしまうのはいたしかたありません。
「音楽再生ソフト(プレーヤー)→DAC」だけじゃないPCのオーディオ信号経路
PCオーディオならではの魅力の1つは潤沢なソフトウェアです。音楽再生ソフトの他にも信号経路を柔軟につなぎかえる仮想オーディオデバイスやイコライザー等のサウンドプロセッサーがあります。
音楽再生ソフトとUSB DACだけではPCオーディオのほんの入り口に過ぎませんから、PCならではの音楽再生の魅力を堪能しましょう。
YouTubeや音楽サブスクアプリをASIO出力
Windowsの場合、Webブラウザを使ったYouTubeやNetflix等の動画・Amazon MusicやSpotify等の再生アプリはASIOで出力することができないためLAN DACを使うことができないなどと言ったことが起こります。仮想オーディオデバイスを搭載したVoiceMeeterはこの問題を解決してくれます。
YouTubeや音楽再生ソフトをイコライジング
Webブラウザや音楽再生ソフトはイコライザーを搭載していない、または搭載していてもおまけ程度といったものがほとんどです。
一部の音楽再生ソフトはサウンドプロセッサー機能を追加するための共通規格となるVSTというプラグインに対応しているので、イコライザーをはじめとする豊富なラインナップから機能追加してイコライジングできるようになります。
VSTプラグインに対応していない音楽再生ソフトやWebブラウザはシステムワイドイコライザー(OS全般に摘要可)を利用することができます。
まとめ
音楽再生のプレーヤーとしてパソコンを利用するメリット
- リーズナブルに高音質なプレーヤーが手に入る
- ニーズに応じた仕様にプレーヤーを容易にカスタマイズできる(ハード&ソフト)
- 音楽ライブラリーがプレーヤーと統合され、音楽に自由にリーチできる
- 卓越したリモート操作で、快適で楽しいリスニングを体験できる
- 録音して音楽ファイルにすることで、混在していたメディアフォーマットを統一できる
- 音楽サブスクなど最先端の音楽再生手段がいち早くリーズナブルに手に入る
- 豊富なサウンドプロセッサーが音質向上に役立つ
PCは音楽プレーヤーのベストソリューション
PCオーディオの引き合いに出されるものとしてネットワークオーディオがあります。音楽ファイルを保存し配信するものとしてNASを、配信先としてネットワークオーディオプレーヤーを使ったシステムはPCオーディオよりも上級であるかのような考えはナンセンスです。ネットワークオーディオは多くの場合、リッピングや音楽ファイルのメンテナンス(バックアップやタグ編集など)にパソコンを使います。※PCレスで実現できたとしても内容的にPCに適わない場合がほとんどです。
ネットワークオーディオを使わかくてもパソコン(とDACやオーディオインターフェイス)で同等以上のことができるので、PCオーディオから始めることをおすすめします。ネットワークオーディオはPCに比べると流行り廃りがあるため、時代の流れに追従しやすいこともPCオーディオのアドバンテージです。
PCオーディオにおすすめのミニPC
PCオーディオに使うパソコンは最新鋭のスペックである必要はないので、静かで小型である程度拡張性のある機種を選べば良いでしょう。MINISFORUMはWindowsをプリインストールしたミニPCとしておすすめです。CUPはAMDとインテルを選択できます。
インテルNUCキットはOS・メモリー・ストレージが組み込まれていません。用途に合わせた仕様にカスタマイズできる点がメリットです。
それでもパソコンが苦手なら、ミュージックサーバーがおすすめ
音楽再生にパソコンを使うのはどうしても抵抗があるといった考えもあります。このような場合はミュージックサーバーを利用するという手段があります。
ミュージックサーバーはメーカーごとにできる事が異なりますが、aurenderの場合は次のような特徴を持っています。また、PC同様にDACを外付けにするタイプとDACを内蔵したタイプが用意されています。
- CDリッピング
-
CDリッピング用ドライブを搭載し内蔵ストレージにリッピング
- 内蔵ストレージ
-
HDDまたはSSDから用途に応じた保存容量を選択して装着
- リモートアプリ
-
iPhone/iPad/Android対応の専用無償アプリ
aurenderの詳細は特集ページをご覧ください。
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