オーディオのライトサイド

オーディオの吸音対策:2つのアプローチ

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良い音のスピーカーを使うだけでは良い音にならないことをご存知でしょうか?

スピーカーは部屋と密接な関係がありますから、何よりも優先してスピーカーと部屋の関係を良好にすることが音質向上に最も効果的な方法です。

目次

何故、スピーカーと部屋は密接な関係なのか?

スピーカーは電気信号を空気振動に変換して音として聴こえるようにする装置です。部屋で音楽を聴く場合は、空気振動は人の耳だけでなく壁にも伝わって反射し、その反射した空気振動も耳に伝わります。つまり、スピーカーから出力される音はスピーカーの直接音と反射音を共に聴いているということです。

反射音が直接音と全く同じであれば問題ないのかもしれませんが、実際にはどのような部屋でも反射音が直接音と同じになることはなく大きく剥離してしまいます。つまり、どれだけ優秀なオーディオ機器を揃えても部屋の反射音が台無しにしてしまい高音質にはならないと言うことです。

反射音を上手く対策することは高音質なオーディオ機器を揃えることに匹敵する音質にとっての重要事項です。オーディオ機器だけが良くても反射音対策だけが良くても高音質にはならず両立させて初めて高音質で音楽を楽しむことができます。

どんな対策を取るべきか?2つのシナリオ

反射音の対策が重要なことはどのようなオーディオ機器でもどのような部屋でも同じですが、何を優先させるかによって対策の取り方も異なります。大まかには、日常生活の一部として音楽を楽しみたいのか、日常生活とは切り離して音質至上主義で音楽を楽しむ時間と空間を持ちたいのかの2つのシナリオがあります。

日常生活の一部として音楽を楽しむ場合の反射音対策

ワンルームマンションやプライベートルーム、リビングルームなど日常生活の空間でスピーカーを使う場合の反射音の対策です。

反射音の対策としてはじめにやるべきことはスピーカーのベストポジションを見つけ出すことで、これにより直接音と反射音の剥離を縮めることができます。

しかし、音質優先でスピーカーのベストポジションを見つけたとしてもその位置が日常生活には支障をきたすことが一般的です。例えば教科書的にはスピーカーは壁からある程度離すことが望ましいのですが、通常の部屋で壁からスピーカーを離せる距離には限界があり仮に置けたとしても何かをするのに邪魔な位置になってしまうことでしょう。現実的には日常生活に支障をきたさない範囲でベストポジションを見つけるといった折衷案を取ることになりますが、他の手段で補うことができるので折衷案であることをあまり気にする必要はありません。

更にはスピーカーの配置決めでこれ以上はないベストポジションを見つけたとしてもそれだけでは反射音の対策は不十分で、音響パネルの設置や壁・床・天井等の音響的な施工で対策することが必要になります。ところが日常生活でこのような物理的な対策を施すことは費用面でも設置スペース的にも現実的ではありません。

大抵の場合、上記のような現実に突き付けられて「やはり結局のところはオーディオルームを持たなければ理想には至らない」といった考えに着地しがちです。

スピーカーを理想的な位置に置けなくても、音響パネルを設置しなくても、壁・床・天井の施工なしでも、直接音と反射音の剥離を縮めて音質を向上することは可能です。これを実現するのがルームイコライザーの役割です。

ルームイコライザーによる反射音対策だけでも大きな成果を得る事はできますが、ルームイコライザーは反射音対策の全てをカバーできるわけではないので許容範囲で物理的な対策を検討する価値は大いにあります。

日常生活の空間で理想的な反射音対策は、ルームイコライザーと物理的な反射音対策を併用してカバーできない点を相互補間し合うハイブリッドな方法です。

日常生活とは切り離して音楽を楽しむ場合の反射音対策 – オーディオルーム

スピーカーの音質向上を何よりも最優先する場合の反射音の対策です。

前述のとおりに直接音と反射音の剥離を少なくする方法の1つにスピーカーの配置があります。配置は、スピーカーと側面の壁との距離・スピーカーと背面の壁との距離(リスナーから見て正面の壁)を変更して最適な位置を見つけ出します。

配置だけで剥離を縮めることには限界があるため、更に反射音の悪影響を抑えるための対策を施します。具体的には、室内音響の専門業者に依頼して壁・床・天井等を施工してもらったり、音響パネルを設置したり等の方法があります。

部屋の反射音対策にしてもスピーカーのベストポジション決めにしても、日常生活に利用する部屋を対象にすることは現実的ではありませんから専用の部屋(オーディオルーム)を設けることになります。

室内音響の専門業者を利用する場合はそれなりの費用を覚悟する必要があるでしょうから、誰にでも実現可能な方法とはなりません。

専用のオーディオルームで音質以外の制約から解放されれば一旦は一件落着とはなりますが、オーディオルームの環境とて時間と共に変化します。1つのオーディオ機器を一生涯使い続けるようなことは滅多になく部分的にでも機器を入れ替えることになります。スピーカーを入れ替えると形や大きさも多少なりとも変わることになります。スピーカーユニットの位置も変わります。これらの変化により反射音の特性にも変化が現れるため、場合によってはルームアコースティックの再調整が必要になります。

そうでなくても室内施工や音響パネルによる対策の精度には限界があります。この点をカバーできる役割としてルームイコライザーはオーディオルームにおいても存在価値があります。先の環境の変化への対応もルームイコライザーによってフレキシブルに追従させることができます。

部屋の施工や音響パネルは静的な対策で環境の変化に追従するには向いていないため調理で例えれば下ごしらえ的役割と言えるでしょうか。ルームイコライザーは動的な対策で環境の変化に迅速かつ的確に対応する柔軟性を持っています。調理で例えるなら季節や風土に合わせた仕上げの役割を担います。

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