DACは大半の機種がUSB対応となりUSB DACがDACの代名詞のように使われていますが、DACに入力するデジタル音声のインターフェイスはUSBに限ったことではありません。S/PDIFやAES/EBUのケーブル接続やワイヤレスであればBluetooth接続、有線LANでネットワーク接続するタイプのDACなど種類は様々です。
この記事でとりあげた3万円以下の据え置きUSB DACに絞っても機種によって接続可能な入力形式(および出力形式)は異なりますから、用途に合ったDACを選ぶようにしましょう。
- FiiO
- iFi audio
- ART
USBポートの違い
様々なコネクター形状が悩みの種のUSBですが、今回の6機種中3機種が今後の主流と思われるType C、残りの3機種がデファクトスタンダードなType Bです。耐久性の面ではType Cが有利とされています。
- Type C
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- FiiO E10K Type-C
- FiiO K3ES
- FiiO BTA30 Pro
- Type B
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- ART USB DI
- FiiO K5
- iFi ZEN DAC
関連:USBケーブル
音声入力はUSBのみでOK?それとも?
ここで取り上げるのはUSB DACですからどの機種もUSB接続でパソコン音源を再生できますが、機種によってはパソコン以外のデジタル音声信号を入力してアナログ変換することもできます。
- USBのみ
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- FiiO E10K Type-C
- ART USB DI
- FiiO K3ES
- iFi ZEN DAC
- S/PDIF入力あり
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- FiiO BTA30 Pro
- FiiO K5 Pro ESS
- Bluetooth入力あり
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- FiiO BTA30 Pro
- アナログ入力あり
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- FiiO K5 Pro ESS
S/PDIF入力対応DACは、テレビ・CDプレーヤーその他家電機器の音質を向上することができます。Bluetooth入力対応DACは、スマホ・パソコン等をワイヤレスで音質向上することができます。アナログ入力対応DACは、レコードプレーヤーその他の音声とUSB等のデジタル音声を切り替えてアナログ出力することができます。
対応音声フォーマットの違いは?
利用するデジタル音声フォーマットに応じてUSB DACを選びましょう。CDをリッピングした音楽ファイルはPCM(16bit44.1kHz)です。音楽サブスクや動画配信も一部のサービスを除いてPCMです。ですから一般的な利用ではPCMに対応していれば十分です。音楽ダウンロード配信やMQA-CDをリッピングする場合は、DSDやMQAに対応したDACを選びましょう。
- PCM対応DAC
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- FiiO E10K Type-C
- ART USB DI
- PCM & DSD対応DAC
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- FiiO K3ES
- FiiO K5 Pro ESS
- FiiO BTA30 Pro
- PCM & DSD & MQA対応DAC
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- iFi ZEN DAC
音声出力の種類
DACは入力したデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換して出力する装置ですからどの機種もアナログ音声出力端子があります。違いはアンバランス出力であるかバランス出力であるかです。
ヘッドホン出力
ヘッドホン出力には一般的なアンバランス(シングルエンド)出力とバランス出力があり、コネクターの規格も様々です。ZEN DACはアンバランス/バランス両対応です。BTA30 Proにヘッドホン出力はありません。
- 3.5mmアンバランス
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- FiiO E10K Type-C
- ART USB DI
- FiiO K3ES
- 6.3mmアンバランス
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- iFi ZEN DAC
- FiiO K5 Pro ESS
- 2.5mm4極バランス
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- FiiO K3ES
- 4.4mm5極バランス
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- iFi ZEN DAC
- ヘッドホン出力なし
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- FiiO BTA30 Pro
アナログライン出力
アナログライン出力にはコンシューマ機器で広く使われるアンバランス(シングルエンド)出力とプロ機器や高級コンシューマ機器で使われるバランス出力があり、USB DACの場合はほとんどがアンバランスのコネクターはRCAでバランスのコネクターはXLRです。一部の機種ではラインのバランス出力として4.4mmバランス端子を装備しています。
- 3.5mmアンバランス
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- FiiO E10K Type-C
- FiiO K3ES
- RCAアンバランス
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- FiiO BTA30 Pro
- FiiO K5 Pro ESS
- iFi ZEN DAC
- XLRバランス
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- ART USB DI
- 4.4mm5極バランス
-
- iFi ZEN DAC
デジタル出力
DACはデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換する装置(または機能)ですが、デジタル出力端子を持つ機種もあります。用途としてはUSB接続非対応のDACをUSB対応とする場合で、S/PDIFケーブル等でUSB DACのS/PDIF出力とUSB非対応DACのS/PDIF入力を接続して使います。
同軸 | 光 | ||
FiiO | E10K Type-C | 最大192kHz/24bit | × |
K3ES | PCM192kHz/32bit DSD64(DOP出力) | 96kHz/32bit | |
K5 Pro ESS | × | × | |
BTA30 Pro | 384kHz/24bit DSD128 (DoP) | 192kHz/24bit | |
iFi audio | ZEN DAC | × | × |
ART | USB DI | × | × |
USB to S/PDIF変換をDDC(デジタル-デジタルコンバーター)と呼ぶ場合がありますが、デジタル-デジタルコンバーターには逆の使い方(S/PDIFをUSBに変換してパソコンに取り込むなど)があるため”DDC”と言う言葉は誤解を招きかねず注意する必要があります。
電源
据え置き型のUSB DACの場合は、USBでパソコンなどから電源供給されるバスパワーのタイプとコンセントから電源供給されるタイプに別れます。
- USBバスパワーのみ
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- FiiO E10K Type-C
- FiiO K3ES
- ART USB DI
- FiiO BTA30 Pro
- 電源アダプター
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- FiiO K5 Pro ESS
- USBバスパワー/電源アダプター
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- iFi ZEN DAC ※電源アダプターは別売オプション
まとめ
機能別に6機種の相違を見てきましたが、まとめとして各機種の特徴や用途を見ていきましょう。
FiiO E10K Type-C
パソコンで音楽サブスク/動画配信/リッピングした音楽ファイル等を再生する用途には、FiiO E10K Type-Cは価格的にも魅力的なUSB DACです。ライン出力は3.5mmステレオアンバランスですからRCA入力機器とは3.5mm-RCAのYケーブルを使用します。
E10K Type-CはS/PDIFのデジタル出力端子を使って、USB入力に対応していないDACをUSB対応にするためのアダプターとして利用することもできます。
Heritage AudioのRAM System 2000は高音質でバランス対応のデジタル(S/PDIF/Bluetooth)/アナログ入力ヘッドホン/プリアンプとして利用できるボリュームコントローラーです。E10K Type-CでUSB入力対応に拡張することができます。
ART USB DI
ART USB DIはバランス出力対応でしかも標準的なXLR端子であることが特徴です。※低価格なコンシューマ機器で見かけることはまずありません
用途がパソコン接続オンリーで音声フォーマットが16bit44.1kHzPCM(CDリッピングしたファイル、音楽サブスク、動画配信等)で事足りるのであれば、バランス対応のパワーアンプやアクティブスピーカーにXLRケーブルで接続できる点が魅力です。
FiiO K3ES
音声フォーマットにDSDが欠かせない場合はFiiO E10K Type-Cの代わりにK3ESがおすすめです。
アナログライン出力とデジタル出力については、上記のE10K Type-Cとほぼ同様となります。※K3ESはS/PDIF出力が同軸に加えて光対応となります。
FiiO BTA30 Pro
Bluetoothにも対応したUSB DACなら今回の6機種の中ではFiiO BTA30 Proが唯一の選択肢です。
アンバランス出力はRCAなので標準的なプリメインアンプに接続しやすく、光/同軸のS/PDIF出力でバランス対応DACに接続することでパワーアンプやアクティブスピーカーが使えるようにもなります。
iFi ZEN DAC
iFi audio ZEN DACは、デジタル音声フォーマットに広く対応(PCM/DSD/MQA )している点と、アンバランス/バランス出力対応が特徴です。別売の電源アダプターでUSBバスパワーを回避することもできます。
- 音声フォーマット:PCM/DSD/MQAと幅広く対応
- アンバランス出力:標準的なRCA端子
- バランス出力:パワーアンプやアクティブスピーカーとバランス接続するには高価なケーブルが必要
- 電源アダプターは付属せず別途購入
FiiO K5 Pro ESS
FiiO K5 Pro ESSは、iFi ZEN DACのライバル的存在ですが、両機種の内容はかなり異なります。
- 入力
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USB入力のみのZEN DACに対して、K5 Pro ESSはUSB以外にもS/PDIF(光/同軸)とアナログ(アンバランス)の入力に対応しているため、DAC&プリアンプとして利用できます。
- 音声フォーマット
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MQAフルデコード対応のZEN DACに対して、K5 Pro ESSはMQA非対応でPCM & DSD対応です。
- 出力
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アンバランス(RCA)&バランス(4.4mm)出力対応のZEN DACに対して、K5 Pro ESSはアンバランス(RCA)のみです。
- 電源
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ZEN DACの電源は標準でUSBバスパワーに対して、K5 Pro ESSは標準で外部電源アダプターが付属します。ZEN DACは別売の電源アダプターで対応します。