ありのままのサウンドクォリティ

IK Multimedia ARC 4のルーム補正

ARC 4はIK Multimediaのルーム補正パッケージでルーム補正ソフト(Windows/Mac)と測定用マイクがセットになっています。ARC 4で作った補正フィルターはオーディオプラグイン(VST3/AU)として利用できるため、プラグインホスト対応のアプリケーション(DAWや音楽再生ソフト等)にインサートすることでルーム補正を適用することができます。

目次

概要

揃えるもの

ARC 4を使うためには次のようなものを用意します。

  • PC(Windows/Mac):ARC 4のルーム補正ソフトをインストール
  • オーディオインターフェイス:ARC 4の測定用マイクを入力して測定信号をPCへ出力
  • マイクスタンド、ケーブル:マイクスタンドとマイクケーブル(マイクとオーディオインターフェイスの接続用)はARC 4には含まれていないため別途用意。オーディオインターフェイスとPCの接続は一般的にはUSBです。

マルチポイント測定

ARC 4はマイク測定により音響特性を収集し、そのデータを元にルーム補正フィルターを作成します。測定位置はリスニングポジションを含む21箇所を測定する方法と7箇所(クイックモード)を測定する方法の2とおりから選択します。※測定箇所の数を任意に指定することはできません。

測定結果の確認

測定結果はARC 4のプラグインを立ち上げて確認することができます。※測定を終えても測定ソフトから即座に確認できるわけではありません。

プラグインから確認できる情報は補正前の音圧周波数特性と補正後の予測音圧周波数特性のみです。位相周波数特性その他の音響特性を確認することはできません。

オーディナリーサウンドのリファレンス測定&補正システムとの比較検証

補正後の予測特性と実際の測定結果との比較

多くのルーム補正システムと同じく、ARC 4は補正処理を終えると補正前と補正後を比較するためのビフォーアフターがグラフ表示されます。ここで注意しなければならない点は、補正前のグラフは実際に測定した結果であるのに対して、補正後のグラフは測定データと補正値から割り出された予測値であるということです。

そこでARC 4のビフォーアフターの信頼度を確認する目的で以下を実施しました。

  • ARC 4とオーディナリーサウンドのリファレンス測定システムとの測定結果の比較
  • ARC 4の補正をかけた状態でのRoom EQ Wizardによる測定(補正の検証)
  • ARC 4とオーディナリーサウンドのリファレンス測定システムの補正の実測比較

ルーム補正システムのレビューなどで多く見かけることに、ビフォーアフターのスクリーンショットを添えて「補正システムによりこのように補正された」との説明がありますがこれは誤った説明です。アフターが示している内容はあくまでデータに基づいた理論値(=予測値)にすぎず、本当のところは補正をかけた状態で実際に測定しなければ判りようがありません。

ARC 4、SoundID Reference、Trinnov等ほとんどのハード・ソフトのルーム補正システムは補正をかけた状態で測定することができませんから、別の方法で測定する必要があります。※オーディナリーサウンドのリファレンス測定&補正システムは、補正フィルターを適用した状態で測定できるため別の手段を講じる必要はありません。

ARC 4とオーディナリーサウンドのリファレンス測定システムとの測定結果の比較

ARC 4の測定結果の信頼性を見るために、オーディナリーサウンドのリファレンス測定システムと比較してみます。

ピークとディップの現れ方の傾向は概ね一致していると言えそうです。

ARC 4による測定は概ね実用範囲にある

ARC 4で補正した状態をRoom EQ Wizardで測定(実測による補正検証)

ARC 4が示す補正後の予測特性と、補正状態で測定した実測特性の比較です。前述のとおりARC 4を使って補正後の特性を測定することはできないため、Room EQ Wizardの測定経路にARC 4の補正をインサートして測定しています。

実際に測定した結果をARC 4の予測特性と比べると、概ね一致していると言えそうです。

ARC 4の補正予測は概ね信頼できる

ARC 4の補正能力をオーディナリーサウンドのリファレンス補正システムと実測比較

前述のとおりにARC 4の補正力を実際に測定してみることで確認したので、次にオーディナリーサウンドのリファレンス補正システムと比較してみます。

Room EQ WizardでARC 4の補正結果を測定すると、ARC 4からは得ることのできないルームアコースティックの諸特性も知ることができるため併せて紹介します。

オーディナリーサウンドのリファレンス補正システムはRoom EQ Wizardを一切使用しませんが、比較のためにリファレンスシステムのデータをRoom EQ Wizardにインポートして表示しています。

周波数軸で見る特性

一般的に周波数特性と呼ばれるのが音圧周波数特性です。縦軸に音圧を横軸に周波数をプロットしたグラフはオーディオ機器やルームアコースティックの極めて基本的な特性を知ることができます。

音圧周波数特性

ARC 4の実測による補正特性と、同じくオーディナリーサウンドのリファレンス補正システムの実測による補正特性の比較です。

グラフが示すとおりに音圧周波数特性の補正能力はリファレンスシステムがARC 4を上回っています。また、リファレンスシステムはスピーカーの低域特性にあわせてフィルターをカットオフできる点もメリットです。

時間軸で見る特性

オーディオの特性は時間軸に着目することも見逃せません。時間軸特性によりオーディオシステム(機器と部屋)の音のキレや音像の再現性能がわかります。

以下は、位相周波数特性、群遅延特性、ステップ応答、インパルス応答のグラフですが、いづれを取ってもオーディナリーサウンド リファレンス補正に軍配が上がります。

スピーカーやルームアコースティックの諸特性については、ChatGPTなどに尋ねれば的確にわかりやすく答えてくれます。

位相周波数特性
群遅延特性
ステップ応答
インパルス特性
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