音楽をスピーカーで聴く時に定在波の影響を回避すると、付帯音が取り除かれて雑味のない良い音(正常な音)になります。スピーカーで出力した音声をリスニングポジションに立てたマイクで録音すると音声編集ソフトで波形として見ることができるので、デジタルルーム補正の前後とソース(デジタル音声データ)の波形を比較してみました。
特定音域が強調されてしまう音源
部屋の定在波の影響で特定の音域が強調されて聴き辛い再生になってしまう楽曲があります。強調される音域は部屋によって様々ですが、オーディナリーサウンドの仕事部屋の場合はP!nkのTryなどがてき面に影響を受けてしまいます。
スペアナが示すとおりソースはフラットでワイド。スピーカーで聴く時のクセは見られない。
ルーム補正なし/ありの状態でマイク録音すると下の画像のようになり、聴感上の差異は波形にも見事に現れています。更にソース(再生元のファイル)とルーム補正したスピーカー再生を比較してみると、概ね同じ波形であることがわかります。
補正した音は聴感上もヘッドホンと同傾向であり、波形からも原音を忠実に再生していることがわかります。
音像定位が大味になってしまう音源
部屋の定在波の影響は音像定位を不明瞭にしてしまいます。BjörkのHunterは低音の打楽器が小気味よく左右にパンして動きますが、定在波により楽器の音も音像定位も大味で緩慢になってしまいます。ルーム補正で改善されます。
スペアナが示すとおりソースはフラットでワイド。スピーカーで聴く時のクセは見られない。
透明感や空気感が損なわれてしまう音源
部屋の定在波はピアノのような繊細で空気を感じさせるような音にも悪影響を及ぼします。Alicia KeysのIf I Ain’t Got Youは清涼感のある高音のピアノからはじまる佳曲ですが、ルーム補正をしないと空気感の乏しい大味な音になってしまいます。ドラムとベースも付帯音のせいで出しゃばりすぎてボーカルの邪魔をしています。
この曲も20Hzから20kHzまでみごとにのびています。
楽器の音色が変わってしまう音源
部屋の定在波は楽器の音色を変えてしまいます。Alicia KeysのDoesn’t Mean Anythingは終始一定のリズムでドラムのキックが演奏されますが、ルーム補正をしないとキックの倍音構成が変わってしまい結果的に音色が変わってしまいます。定在波による周波数特性の歪みは、他の楽器やボーカルにも影響して聴きとり辛く解像度の低い音質になります。
20Hzから20kHzまでのワイドな周波数の中で、終始コンスタントに演奏されるドラムのキック(50Hz前後)がスペアナからもはっきりわかります。
波形をマクロでみると違いがわかりづらいので時間軸を拡大すると、補正ありがソースの波形に近いことがわかります。補正なしは波形が変化していて音色が変わったことがわかります。
低音再生のチェックに
Amy Winehouse – Our Day Will Comeをスペアナで見ると、40Hz~110Hzが充実していることがわかります。主な成分はベース音と思われますが聴感上では控え目にステディな演奏で特に前に張り出したバランスではありません。聴いていてベースその他の低音楽器にばらつきがある場合は再生環境に問題がある可能性があります。
アコースティックギターのような低音成分が少ない楽曲は、定在波の影響が目立ちにくい
低音成分が少ない楽曲は劣化に気づきにくい
アコースティックギターだけの演奏のように低音成分が少ない楽曲は、ベースやドラムなど低音成分を多く含む楽曲に比べると定在波の影響を受けていないかのように錯覚します。特にThe Colonel & The Governor / Martin Taylor & Tommy Emmanuelのような高音質アルバムの場合は錯覚しがちですが、ヘッドホンの音やルーム補正した音と聴き比べるとやはり付帯音が付いていることに気づきます。
アコースティックギターのような低音成分が少ない楽曲は、定在波の影響が目立ちにくい