PCオーディオ、ネットワークオーディオのスタートライン
CDリッピングは、必ずしもCDの音をそのまま忠実に読み取ってオーディオファイルにしているとは限りません。状態の悪いCDの場合、読み取り不能な箇所は補間値が生成され代用されます。※リッピングに限らず通常の再生時でも同様です。
ハードディスクやSSD等の大容量ストレージにCDの音楽データを移し替えてミュージックライブラリーとして音楽を楽しむスタイルも随分と定着してきましたが、肝心の音楽データは元のCDと寸分たがわないものでありたいものです。
一般的なPC用ドライブとリッピングソフトの組み合わせの場合、リッピングソフトの設定でエラー訂正を試みることになりますが、エラー訂正により正しく読み取れたのかそれとも出来上がったファイルの一部に補間値が使われているのかどうかを知る術はありません。
CD-AUDIOをリッピングした後、リッピングした音データがCDに入っている音と同じか、 あるいは、知らないうちにデータ補間が入ってしまい、元の音と違うのかを確認することは厳密にはできません。複数回リッピングを行い、データを比較する方法では、毎回のリッピング時にドライブが毎回同じ場所で補間を入れてしまうと検出は難しくなります。
https://jpn.pioneer/ja/pcperipherals/dvdrrw/story/index_27.php
そこで注目されるのがPureRead機能を搭載したPC用ドライブをリッピングに使うことです。
PureReadはCD読み取りモードの一つにパーフェクトモードがあり、このモードを使うと正しく読み取れなかった(=エラー訂正できなかった)箇所に差し掛かるとリッピング動作を停止します。つまり、中断することなくリッピングに成功した場合は元の音楽データを正しく読み取れたことを意味します。
結局、元の音と違うかどうかを知らせてくれるのはPure Read機能を搭載したドライブのみ。パイオニアのPure Read搭載ドライブでパーフェクトモードをお選び頂き、無事リッピングできていれば、音データは元の音だと担保できます。尚、パーフェクトモードでは、データ補間がどうしても必要な場合はディスクからの読み出しを中止いたします。
https://jpn.pioneer/ja/pcperipherals/dvdrrw/story/index_27.php
そんな訳で、リッピングにはPureReadのパーフェクトモードを利用したいものです。
PureReadはどんなアプリでも動作するわけではない
*ピュアリードは、同梱ソフト以外のCD再生/取り込みソフトでも使用できます(すべてのソフトでの動作を保証するものではありません)。
https://jpn.pioneer/ja/pcperipherals/bdd/products/bdr_s12j_x/basic.php
かと言ってどのリッピングソフトならPureReadが使えるのかの情報もあまり見かけることはありません。
リッピングソフトのエラー訂正ではダメなのか?
正しく読み取れたかどうかはわからなくても、リッピングソフトのエラー訂正だけで実は正しく読み取れているのではないか?
そんな疑問が湧いてきてもおかしくありません。そこで、PureReadのパーフェクトモードに頼らずにリッピングして、パーフェクトモードを使った場合と比較してみました。
リッピングソフトとしてはマルチプラットフォーム対応(Win/Mac/Linux)のJRiver Media Center 24をWindows 10で使ってみることにしました。
環境は次のようなものです。
- ドライブ:Pioneer BDR-XD05W2 ※PureRead2+搭載機
- リッピングソフト:JRiver Media Center 24 ※Windows10 64bit
試したパターン
- JRiver Media Center 24のエラー訂正だけでリッピング
※PureReadはパーフェクトモードから標準モードに設定変更 - 1.のエラー訂正とパーフェクトモードをどちらも適用してリッピング
上記の試したパターン1.でリッピングは完了しました。JRiver Media Centerが出力したログファイルは次のようなものでした。
ログによると全トラック正しく読み取れたように思えます。
<ログファイル抜粋>
トラック 1: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 2: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 3: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 4: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 5: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 6: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 7: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 8: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 9: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 10: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 11: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
次に、上記の試したパターン2.(パーフェクトモード使用)でJRiver Media Centerが出力したログファイルは次のようなものでした。
中断することなく最後までリッピングしています。
<ログファイル抜粋>
トラック 1: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 2: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 3: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 4: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 5: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 6: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 7: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 8: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 9: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 10: 非セキュアリアップ、 1% セクターの再度読み込みが必要です。 1% セクターが未検証です。00:01:11 Unreliable data after 16 re-read attempts(16回の再読み取り試行後の信頼性の低いデータ)
トラック 11: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
パーフェクトモードでリッピングを完了したにもかかわらずトラック10は信頼性が低いとレポートされているので、同じパターンを再度試みた結果が次のログです。
<ログファイル抜粋>
トラック 1: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 2: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 3: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 4: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 5: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 6: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 7: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 8: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 9: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
トラック 10: セキュアリップ、 1% セクターの再度読み込みが必要です。 1% セクターが未検証です。00:01:11 2 re-reads required to get good data(良いデータを得るために2回の再読み込みが必要)
トラック 11: セキュアリップ、 再読み込みは無し。
今度は再読み込みした結果、全てセキュアリップになっています。
WaveCompareで比較
上記のログを見る限り1番目と3番目のリッピングはセキュアリップと報告されているので、WaveCompareで比較してみることにします。
WaveCompareは一対のWAVEファイルを比較する他にも「連続モード」オプションで複数ファイルの比較を一気にやってくれるので、全トラックを比較しました。
8トラック目までは快調に”一致しました”となりましたが、9トラック目では”相違があります”と報告されます。

JRiverのログによると9トラック目は全て”セキュアリップ ” と報告されていて何故かWaveCompareの結果と異なります。※念のため連続モードを外して9トラック目だけを比較しても”相違があります”で相違の詳細内容も同じでした。
残りの10トラック目と11トラック目も”相違があります”と報告されました。


PureReadパーフェクトモードをオン・オフしてリッピングした2組のWAVE(全11 ファイル )をWaveCompareで比較すると、トラック9からトラック11の3ファイルに相違がある結果となりました。
元の音だと担保できるパーフェクトモードでリッピングの度にデータに相違が出るということは、JRiverのエラー訂正をオンにした状態ではパーフェクトモードの動作は保証されないようです。
他の2組のリッピングも比較
リッピング | JRiverの設定 | PureReadのモード | JRiverログ |
1回目 | エラー訂正(オン) | 標準モード | 全てセキュアリップ |
2回目 | エラー訂正(オン) | パーフェクトモード | トラック10以外セキュアリップ |
3回目 | エラー訂正(オン) | パーフェクトモード | 全てセキュアリップ |
表のようにJRiverログで全てセキュアリップとなった1回目と3回目のリッピングをWaveCompareで比べると3ファイルに相違があったので、他の組み合わせ(1回目と2回目、 2回目と3回目 )も試してみると、
1回目と2回目:トラック9とトラック11は 1回目と3回目の比較と同一の相違。トラック10は大幅に相違。
2回目と3回目(共にパーフェクトモード):トラック9と11は一致。トラック10は大幅に相違。
何やら訳の分からないことになってきました。。。波形編集ソフトで見てみるかぁ?
Sound Forgeで比較
結局、波形編集ソフトSound Forgeの登場となりました。WaveCompareは信頼できるアプリですが、他のツールを使うことで確信を持てることと相違を視覚的に見てみたかったこともあります。
確認方法としては、片方のトラックの位相を反転してもう片方とミックスする方法をとりました。2つのトラックが完全一致していれば完全に無音になるので相違点のある個所を視覚的に把握しやすくなるからです。
リッピング1回目と3回目の比較
WaveCompareで相違のあった3つのトラックを上記の方法で調べたを掲載します。
波形表示の説明
Sound Forgeの画面はデジタル音声データの単位であるサンプルが表示されるまで拡大しています。1つの点が1サンプルになります。
因みに、各トラックの上の点線が左チャンネル、下の点線が右チャンネルです。
各々のトラックでWaveCompareと同じ数の相違点がありました。
※トラック9:3か所、トラック10:2か所、トラック11、2か所
リッピング2回目と3回目の比較
パーフェクトモードにしたにもかかわらず激しく差の合った トラック 10を確認しました。

JRiverのエラーログが示すとおりにセキュアリップと非セキュアリップの違いが表れた結果と言えます。
はて、JRiverのエラー訂正は1回目(パーフェクトモード:オフ)と3回目(パーフェクトモード:オン)のどちらがセキュアリップなのでしょうか?
関連記事:PureReadドライブ最新事情